GIANT(ジャイアント)が2016年からリリースしている軽量アドベンチャーバイク『Toughroad(タフロード)』。このバイクは、オンロードの巡航性能とオフロードの走破性を兼ね備えた長距離ツーリングバイクです。
前回のレビューでは〔2017 Toughroad SLR 0 レビュー《1:詳細・重量》〕とバイクの構成と概要などを掲載しました。今回は基本的走行をしたインプレを書き出します。
『Toughroad SLR 0』は、変速ギアの構成がスポーツバイクとしては珍しく後にのみディレイラー(変速機)が搭載されており、クランクに付けられたチェーリング(歯車)は1枚のみの11段変速(1 × 11s)。近年のXC(クロスカントリー)MTBでも1 × 11sや1 × 12sといった同じようなリアディレイラーのみの変速構成が主流になっています。
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バイク・フィッティング
購入した[2017 Toughroad SLR 0]のサイズは〈390(XS)〉。フレームジオメトリ(フレームの設計)は2016年モデルから大きく変更されました。
私の身長は〈約166センチ〉と長身でもなく手足が長くもありません。適応できるサイズは、カタログみるかぎり〈420(S):165〜175cm〉でも問題なく乗ることは可能です。しかし、ハンドルバーを低くセッティングするが好みであるため、ヘッドチューブ長が〈100mm〉の〈390(XS)〉を選んでいます。
身長〈166cm〉私がフィッティング済ませたサイズ〈390(XS)〉バイクのサドル高は画像を確認してください。サドルの高さは、クランク(BB=ボトムブラケット)の中心からサドルの天辺までの長さは約650ミリです。シートポスト長が〈約350mm〉あるため、まだ余裕で高さを伸ばすことができます。
そのほか、注意しておかなければならないのが、採用されているハンドルバーの後方曲げ角(バックスウィープ)が大きいため、トップチューブが長いToughroadてもハンドルグリップ位置が手前にきます。軽量化やポジション変更でバックスイープが〈0度〉にちかいストレートバーに交換すると、ハンドルグリップが遠くなるので、その点は気をつけてください。
そのような理由もふくめ、ユーザーはハンドルバーのライザーやバックスイープの数値によってハンドルグリップの位置調整が可能です。また手足の長いユーザーは、長いステムに変更することでも調整が可能です。
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Toughroad SLR 0の実走
実走前にタイヤの空気圧チェックします。とくにスポーツバイクではタイヤ管理は重要な項目の一つ。空気圧の設定によってグリップから衝撃吸収にハンドリングといった『走行』フィーリングを左右します。
バイクのタイヤは[GIANT SYCAMORE S 700x50C]で推奨空気圧は〈2.1~4.2 ber〉。試走で色んな路面を走ってみて衝撃吸収フィーリングの良かった〈約1.9 ber〉に設定しました。ちなみに私の体重は〈約56キロ〉です。
発進・加速
まずはターマック(舗装路)から実走。
走り始めは29er(29インチホイール)バイクらしい重めの漕ぎだしを予想していましたが、意外やスムーズに走りはじめました。
標準のタイヤとチューブは若干重めでありますが、そんな走行抵抗が低く感じられるほど軽快な走り出し。勢いよく漕ぎだせば、変速ギアは次々とトップギア付近に上がることになります。あきらかに同シリーズ『SLR 2』と発進と加速が違う理由は、構成されるパーツ群の違いにありました。
違いは、大きい要素で3つ。
- バイク重量
- フロントチェーンリング36T
- ホイールセット重量
バイク重量
Toughroad SLR 0は、軽量フレームと軽量パーツ構成であるためバイク重量は〈10.5kg〉。SLR 2の重量〈11.5kg〉とくらべて1キログラムの差があります。
フロントチェーンリング
SLR 0の変速構成は〈1 × 11速〉という前変速がないシングルチェーリング。また、1枚しかない歯数は〈36T〉と小さいためギア比的に発進時の漕ぎだしは軽くなります。
ホイールセット重量
ホイールは[GIANT PX-2 28/32H]というシクロクロスバイク完成車に採用される軽めのホイールを採用。アドベンチャーバイク用としては十分軽量なホイールセット。
以上の理由によってバイクの発進・加速が軽快なのです。
ちなみに『SLR 2』では[GIANT SX-2 32H]という強度と剛性の高いホイールを採用しています。重量はそこそこあるが積載荷重でも壊れないための重さです。
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巡航
SLR 0は、29インチホイールと太いタイヤの質量によって回転に慣性力が生まれるため、速度を維持するのが楽なバイクです。低い勾配や向かい風でも大きいロスがなく、適切なギアとペダリングトルクを入力すれば楽に進むことができます。
タイヤの太さから考えても走りは軽く、同じようなギア構成とホイール径のMTBと比べても巡航速度は高く楽です。ただし〈1 × 11段〉といったギア構成であるため、高速巡航は得意ではなく〈30Km/h〉あたりを維持するためにはトップギア(36 × 11T)などを選択して漕ぎ倒さないといけません。
このバイクは、荷物をパッキングしてノンビリとサイクリングスピードで走行するのが合っています。『SLR 2』とは、ホイールの特徴もドライブギアの構成も全く違うため、両方乗り比べて自分の利用方に合ったバイクを選択できればベストですね。
グラベル走行
Toughroadはグラベルルート(砂利道)を長距離走行するため開発されたアドベンチャーバイク。早速ダートルートを走ってみましょう。
29インチホイールに〈50c〉幅のタイヤを装着したToughroadにとって砂利道は障害にはならず、バイクは安定して進みます。ライダーは普段どおりのペダリングと、ギャップを拾ってブレるハンドルバーを軽く補正するだけ。
グラベルロードバイクやクロスバイクなら避ける道路が荒れた箇所でも、わずかなハンドル操作と重心移動でクリアできる。タイヤのボリュームがあるため小粒の岩がつづく岩場の走破も問題ありません。ただし、パンクしないように尖った岩には注意が必要です。
このバイクの強みはグラベルロードの下りにあって、グリップの低い路面でバイクコントロールしながら障害物を避けたり、ギャップをバニーホップや抜重でクリアしたりと、29er MTBのように勢いよく走行ができます。このようなフィールドルートではアドベンチャーバイクの高い走破性を実感。グラベルロードバイクでの走破は厳しい(危険)でしょう。
タイヤの振動吸収性が高いため、空気圧を〈約1.8 ber〉あたりに設定しておけば、ホイールの衝撃緩和とあわせて身体に伝わる衝撃の角をずいぶんと和らげてくれます。
登坂
変速段数が11速のToughroad SLR 0。変速が少ないと峠越えや登りラフロードで厳しい状況になりそうで心配の方も多そう。
たしかに、〈2 × 11速〉や〈3 × 9速〉のようにワイドレンジな構成には及びませんが、SRAM製のリアスプロケット(後ギア)の歯車は〈11速:11-42t〉と最大が〈42T〉もある大きなもの。クランクのチェーンリングも〈36T〉とMTB並みに小さくギア比〈0.857〉です。『SLR 2』のギア構成でたとえると、リアスプロケットの最大が〈34T〉、センターチェーンリングが〈32T〉の場合、ギア比〈0.941〉なので『SLR 0』の方が軽いギアになります。この条件を『SLR 2』に仮想的なリアスプロケット最大として当てはめると〈38T〉になります。
それだけ軽いギアが使えるので、キャリアやパニアケースなどを積載して負荷をかけない状態であれば、登坂能力は十分にあることになります。
実走では勾配率15%の坂でも登坂は可能でした。車重も軽いためラフロードの登りも29er MTBのようにクリアできます。通常のサイクリングで大きな障害はないでしょう。あと、峠越えから延々と続く下り道では、ブレーキレバーを多く引くことになりますが、油圧ディスクブレーキ[TEKTRO SLATE T4]の余裕な制動力のおかげで連続するコーナーリングを十分楽しめました。
今回は、基本的な走行についてのインプレでした。次回は、様々なルートを実走しながらハンドリングやコンポーネントのチェックする〔Toughroad SLR 0 レビュー《3:操作性》〕になります。
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タフロード長期レビュー
スポーツ自転車は、買ったあとも意外と手を加えることがあります。基本は、細かく身体に合わせたり(フィッティング)。さらに、自分の求める走り方に部品を交換したり、より軽快に走行できるよう軽量化したりと、乗り手に好みに合わせたアップデートができます。タフロードは軽量化すればクロスバイクのように高速に走れ、グリップの良い太いタイヤをはかせれば悪路も走れ、荷物を積載すればロングツーリングも可能です。また、ドライブトレイン(変速機・ギア)を変更すれば脚力と走行フィールドに最適化した走行も可能です。
そのような多彩な方向性に対応できることを Toughroad で実施して『GIANT Toughroad 長期レポート』として長期レビューします。
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